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“システムの都合で廃棄処分される、高品質な生地を使ったサステナブルなコレクション”

BJ: このコレクションを作ろうと思ったきっかけは?

KEN: 日本の職人の技匠が詰まった最高品質な生地が、毎年廃棄処分になっている現実を知りました。その理由は、品質の問題では無く、仕組みの問題でした。

縫製工場は必要な量より数%多く生地を発注し、生地工場は受注量より数%多く生地を生産する為でした。

これは、どんなに高い技術を持っていても、人間の手によって作られるものは、工業的にはB品と呼ばれるものが、数%出てしまう為でした。

消費者は、当然ですが、ちょっと焼きすぎたピザなら許してくれますが、白いシャツに0.1mmの点があることは許容してくれません。そして、店舗は、予算を厳守する為に、発注したものを欠品なく入荷しなければなりませんし、それ以上を仕入れる予算を持たない場合が多いです。

キッチンにピザのタネが余ったからと言って、ピザを一枚余分に買ってくれるお客様は稀ですし、タネが少し足りないからといって少し小さいピザで許してくれるお客様も少ないのと同じ原理です。

この”当然の要求”が、産業廃棄物を産んでしまいます。

何故なら、その要求を満たす為に必要よりちょっと多く材料を仕込まないといけない為です。

実際に産業廃棄されそうな生地を見ると、日本の職人の技匠が詰まった最高品質のものが沢山ありました。 BANKS JOURNALはサステナビリティーへ取り組んでいるので、この現実の改善へ貢献出来ると考えました。これは全メンバー満場一致でした。こうして”BANKS JOURNAL PROJECT (以後BJP)”コレクションが始動しました。

BJ:  何故日本製にしたのですか?

KEN: 日本に住んでいると、至る所でエシカル小さなイノベーションを発見します。例えば、日本の洗濯機は、欧米より40%少ない水で洗えます。そんなこと気にしている国が他にありますか?(笑) 日本のものづくりはそう言ったこだわりが詰まっています。

服も同じです。ディテールへの過剰なまでの職人の拘りの結果、単価が高くなってしまっています。価格破壊が進んだアパレル業界でそれは悪として捉えられ、技匠に拘る職人気質な工場はどんどん閉鎖へ追い込まれてしまっています。

この心意気はBANKS JOURNALと共鳴するものがあると感じました。そしてBANKS JOURNALを好きで居てくれる方にこそ響くクオリティーである筈だと。

BJ: デザインで特にコダワったところは?

KEN: このコレクションは至る所に職人気質の拘りが詰まっています。でもその一つ一つを頭で知る必要は無く、結果、1完成品として違いを感じて貰えるように意識しました。

例えば、デニムは2型ありますが、それぞれステッチのデザインが違います。ヴィンテージは太番手でオーセンティックな配色ステッチです。そしてワンウォッシュの方は、モダンを意識して、細目の番手で、単色でまとめ、クリーンなデザインになっています。シャツもそれぞれ、生地の持つ雰囲気を最大化する為に、ボタンやステッチワークを変えています。

細かく見ると、色んなクラフツマンシップが詰まっていて、長く付き合っても常に新しい発見があるコレクションになっています。そして、そういうウンチクよりも、着た瞬間に違いを感じて貰える筈です。 ぱっと見は使いやすいベーシックなデザインなのですが、他とは違う一品に仕上がっていると思います。

BJ: コレクションはタイムレスで特別な感じがします。その理由は何ですか?

究極のサステナビリティの一つは、捨てずに使い続けることです。それは経済社会では不都合な真実です。日本の職人が製品を作る時には、長い間製品を使い続けて貰えるように努力します。洗濯耐久性や堅牢度等、様々な試験を生地でも製品でも繰り返し、納得の行くものだけが工場から出荷されます。当然、使い続けたら、色褪せたり風化したり、使い方によっては破れたりします。それでもコダワり、その変化すらもデザインの一部に出来るコレクションにしたいと思いました。

それは、耐久性とエイジングのバランスをデザインする作業とも言えます。

この考え方はBANKS JOURNALの、トレンドに流されないタイムレスなデザイン、というコンセプトそのものです。

つまり、BANKS JOURNALの歩みの一つの集大成となるコレクションを始められた、と感じています。

BJ: 特筆すべき点は何ですか?

KEN: 日本製なのでBJPの価格帯は通常よりも高くなると決まりました。それはつまり、一つの製品に多くの予算をかけられる、ということでした。その為、通常よりも多くのエシカルでサステナブルな技術を取り入れたいと考えました。例えば、薬剤を使わないレーザー加工のロゴ、リサイクル レザーのパッチ、バイオマスなボタン等です。

その結果、このコレクションはBANKS JOURNAL史上最高にサステナブルに仕上げられたと思います。

BJ: なるほど!では次の予定は?

KEN: 次回はあります。ただ、高品質な廃棄処分生地を見つけるのは縁なので、いつ、どれだけ、ということは予測できません。

生地も限られている為、常に数量限定になります。そして、巡り合った生地一つ一つの個性に合わせてデザインを決めます。

結果、販売計画や作業効率といった意味では、とても不安定で非効率になってしまいます。

それでも、BANKS JOURNALとしてBJPは有意義なコレクションとして注力し続けます。

そして、実際に使って下さる方々も、その製品と過ごす日々に喜びを感じて貰えるようになりたいです。